恩師から学んだこと―Nina先生

Nina Mogar ニナ モーガー先生

 

「『ニナ』が亡くなったんだって」。

仕事につくなり同僚から

伝えられた悲しいニュース。

マリアニナ モーガー (Mariannina Moger)先生は

サンフランシスコ市立大学で幼児教育

を勉強した人なら必ずニナ先生のことを

聞いたことがあるはず。

30年以上前に、脳の発達と幼児教育を結びつけて

幼児教育学部のカリキュラムの軸として取り入れ、

わかりやすくそして現実的、その上興奮してくると

口角泡を飛ばしてイタリア語で檄を飛ばし、クラスの

エネルギーが足りない時には脳の形の柔らかい

ボールをクラス中に投げて喝を入れ、

ものすごい速さで喋って講義をするという

名物先生でした。

長女が生まれてアメリカでの子育て、教育に関して

まったく知識のなかった私に、夫から勧められて

幼児教育のクラスを受講することにしました。

そこで出会ったのがNina先生でした。

それまで、子供の英才教育に興味を持っていた

私にとって、Nina先生と知り合わなければ、

子供たちにとんでもない教育をしていたのではないか?

と恐怖すら覚えます。

脳の発達を知らずして英才教育なんて

絶対に無理。

英才教育より、食べ物が脳に与える影響の大きさとか、

体は中心から外へ向かって、頭からつま先に向かって

発達するとか、

そこで私がNina先生から学んだ中から私にとって

衝撃的だったものをいくつか紹介したいと思います。

まっとうな人間と呼べるのは25歳を過ぎてから

善悪や道徳など抽象的な概念をつかさどる前頭葉が

ほかの脳の部分とのスムーズに連携が取れるようになるのは

25歳ぐらい。やっとそこで人間の大人と呼べるのです。

それまでは訓練によって部分的に成長させる

事は出来るのですが(アスリートとか)、一人の分別のある大人の

脳になるのは25歳。それも落ち着いた状態でという条件付き。

非常事態には「生き延びること」を最優先にする爬虫類の

脳になってしまいます。

 

トカゲは私の言葉を理解しません。蛇は泣いている私の

頭をなでて、いい子、いい子はしてくれません。

(手がないからしょうがないけど…)(笑)

その上、脳内物質はホルモンの影響をうけやすいし、

更年期のお母さんとティーンエイジャーなんて端的に言えば、

ホルモンとホルモンの戦い!なんです。

家の中では母国語を話す。

アメリカはネイティブアメリカンを除いては移民とその

子孫によってできている国で、英語が共通語となっています。

Nina先生はシシリア出身のイタリア移民。小学校に行くまで

シシリア語しかはなさなかったそうです。

とにかく、八歳ぐらいまでなら、子供たちは十か国語ぐらい

同時に学べるそうです。

英語は学校、テレビ、ビデオ、近所のスーパーなどあらゆる

ところで話されていますが、家族の中で話される言葉は

家族の中でしか学べないのです。そしてそれは言語だけではなく

文化、伝統を伝えていくことになるのです。

日本だったら正しい方言を話せるってカッコいいと

思うのは私だけでしょうか?

問題があるときはまずは体を疑え

どういうことかというと、子供の行動に問題があるとき

まず、身体的な理由から発生し、感情的な問題に発展する

ということです。

友人の小1が担任の先生から、「この子は私の指示に

従わない、クラスでの問題児!」とレッテルを貼られ

校長先生を通して面接の要請があり、ついには

「家庭に何か問題があるのではないのか?」

と言われたそうです。

当面は学校に親が同行し、何か起きたときは

速やかに教室から出るよういわれてお母さんは

毎日学校に同行していました。

ある日、お父さんが同行したときに全てを

理解しました。問題は「先生の声」でした!

先生の声のトーンが頭痛を引き起こすのです。

お父さんも小さい時に同じ思いをしたのだそうです。

両親はすぐにスタンフォード大学の小児科に相談し、

治療を受け、学校はクラスを変えてもらい、

その男の子はもとの優等生に戻ったそうです。

三年生になっても本が読めない子がいます。親に

よくよく聞いてみると、その子は生後8か月ぐらいで

歩き始め、ハイハイをほとんどしなかったというのです。

この子は知恵遅れとレッテルをはられました。

ハイハイは目と手の連動を必要とします。これができないと

指で文字を指しながら読むという基本的な動作が難しいです。

小学校の作業療法教室にはとてつもなく長いトンネルがあり

生徒たちは赤ちゃんの時にしてこなかったハイハイを

体験することによって本が読めるようになります。

幼児にシェアやごめんなさいを期待しない。

幼児は通常、常識、モラルなどを自動的に判断する

前頭葉は十分発達していません。

隣で遊んでいるAちゃんのシャベルが欲しいなと

思ったら、「ねえ、貸してくれる?」と尋ねることもなく

さっさと手を伸ばしてそれを使い始めます。

そこでAちゃんは領域に不法侵入しシャベルを

強奪したBちゃんにかみつき、使ってなかったけど

自分の所有物、ひいては、自分の体の一部である

シャベルを奪還しようとします。

それを見ていた大人は、「Aちゃんはケチで凶暴」

「Bちゃんは礼儀知らず」のレッテルを貼り

「あの二人とは遊ばせないほうがいいかも?」

ということになります。

基本的に言葉を話すことができたとしても、おもちゃの

やり取りには本能的なサバイバルが関わってくるので

トカゲと同じ爬虫類の脳が活躍しています。

本能で生きるトカゲに、「なぜ?、どうして?」は通用しません。

もとはといえばシャベルに手を出したのはBちゃん。

でも噛まれて泣いているBちゃんは被害者となり

Bちゃんの親は、本能に従って自分を守ろうとした

Aちゃんに謝罪を求めるわけです。

Nina先生は大人が第一にすることは

ふたりをひきはなし、別々に対処する。

子供を理解する大人の対応です。

親同士がこの年代の子供の脳を理解していたら

わだかまりは残りません。

もともと意地悪な子なんていません。

(少なくとも、私はあったことがありません。)

1.親はよくあることと笑って「ごめんね!」と言い合い

物理的に引き離す。

2.子供を落ち着かせる。抱っこする、水を飲ませる等。

  ブランコ、逆さま、水遊び、粘土

は子供を落ち着かせる。

バランスをつかさどる三半規管は子供のうちは

未発達なのでぐるぐる回転しようが、逆立ちしようが

大人のように気持ち悪くならないばかりか、

落ち着かせる効果があります。

水遊びと粘土は触覚による刺激で脳をリセット。

やわらかい布(フリース、スエード)に触らせるのも

効果ありです。

3.説教は落ち着いてから。

サバイバルモードの脳は、くどいようですが、

言葉を理解しません。

脳が学習するのは、楽しい時、落ち着いているとき、要は

ご機嫌のいい時です。この状態の時に前頭葉と大脳皮質

の間に新しい回線がつながるのです。

******

まだまだたくさんありますので、リクエストがあれば

またNina先生のことを書きますね。

本当に、Nina先生に出会えて、彼女から直接

学べたことは、私の宝です。

うちの娘達を含めてサンフランシスコ中の幼稚園、

学生たちが受けた恩恵ははかりしれません。

11月4日の早朝、眠るように旅立たれたとききました。

Nina先生、ありがとうございました。

天国から私たちを見守ってくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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