取り繕われた密室 6

gray wooden stairs

「彼に会わせてくください!」
私の理性は、自分の言っていることは状況的に無理だと知っていたが、
口をついて出てくる魂の声は「彼に合わせてください!」だった。
ただ、救急隊員のえらく事務的な物言いにカチッときた。
もう少し言い方があるんじゃないか?
この理不尽な状況下、だれかに怒りの感情をぶつけたかった。
同時にこれからやらなけらばならないであろうことの量に
怯えていた。

救急隊員がドアに黄色と黒のテープを貼り付けた。

隣りに座っていたクリスティーの携帯に電話がかかってきた。
「検視官が到着したようだわ。チョット行ってくるわね。」
そう言うと、階段を降りていった。
三人の警官の制服を着た検視官が階段を登ってきた。
白人の男性二人、女性一人だった。
私は立ち上がり彼らに道を開けた。
救急隊員と検視官3人が部屋に入っていった。

彼らの後ろから長女が階段を登ってきた。
踊り場に立ちすくみ、私を見上げる娘の顔を見るなり、
階段を駆け下り、痩せて顔色の悪い娘を抱きしめた。
嗚咽を噛み殺し、体が震える娘。
こんな日が来るとを思っていなかった。

続く

 

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